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世の中を常なきものと聞きしかど
つらきことこそ久しかりけれ

歌の意味
世の中は無常なものと聞いていたけれど、あなたのつれなさばかりは、久しく続くことだ。
鑑賞
巻第十九 雑恋 1259

詞書「延喜御時、按察の御息所久しく勘事にて、御乳母につけて参らせける」
 世の中は無常なものと聞いていたが、つれない扱いばかりは久しく続くと詠む歌である。詞書から、醍醐天皇の御代に、按察の御息所が長く天皇のお咎めを受けていた時、天皇の乳母に託して差し上げた歌とわかる。何事も移り変わるはずの世の中で、天皇の勘気だけがいつまでも解けないことを恨み、許しを願う心を詠んでいる。次歌の第千二百六十首は、これに対する天皇の返しである。
 作者の「按察のみやす所」は、誰を指すかについて定説を見ない。按察御息所は、父の官職である按察使にちなむ呼び名をもつ、天皇の寵を受けた女性の呼称で、醍醐天皇に仕えた。

 初句「世の中を」は、この世を、の意である。
 二句「常なきものと」は、無常なものと、の意で、すべてが移り変わるという仏教の考えをいう。次歌の第千二百六十首の二句「常なきものと」と、同じ句を共有している。
 三句「聞きしかど」は、聞いていたけれど、の意で、「しか」は過去の助動詞「き」の已然形、「ど」は逆接の接続助詞である。
 四句「つらきことこそ」は、つれない仕打ちこそは、の意で、係助詞「こそ」は結句の已然形「けれ」で結ぶ係り結びである。次歌の第千二百六十首の初句「つらきをば」と、「つらき」の語を共有している。
 結句「久しかりけれ」は、久しく続くことだ、の意で、「けれ」は詠嘆の助動詞「けり」の已然形である。二句の「常なき」と対をなしている。

かうじ:勘事。天皇などの勘気を受けて出仕を止められること
みやすどころ:御息所。天皇の寵を受けた女御や更衣
めのと:乳母
作者
按察御息所
出典
拾遺和歌集
前の歌
涙川水まさればやしきたへの 枕のうきて止まらざるらん
次の歌
つらきをば常なきものと思ひつつ 久しきことを頼みやはせぬ