涙川水まさればやしきたへの
枕のうきて止まらざるらん
- 歌の意味
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涙の川の水かさが増したからだろうか、枕が浮いて、ここにとどまらないのだろう。
- 鑑賞
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巻第十九 雑恋 1258
詞書「忠君宰相、雅信が娘にまかり通ひて、ほどなくて調度どもを運び返し侍りければ、沈の枕を添へて侍りけるを、返しおこせたりければ」
涙の川の水かさが増したからだろうか、枕が浮いてとどまらないのだろうと詠む歌である。詞書から、忠君宰相が作者の娘のもとに通いはじめて間もなく、身の回りの道具を運び返したので、作者が沈香の枕を添えて送ったところ、それも返してよこしたので詠んだ歌とわかる。娘との仲が早くも絶えたことを、涙の川に浮いて流れ去る枕にたとえ、「浮き」に「憂き」を響かせて、父としての嘆きを詠んでいる。
作者の「まさのぶ」は源雅信である。宇多天皇の皇子敦実親王の子で、左大臣に至った。娘の倫子は藤原道長の妻となった。
初句「涙川」は、涙が川のように流れることをいう語である。
二句「水まさればや」は、水かさが増したからだろうか、の意で、「ば」は已然形について原因を表し、係助詞「や」は結句の「らん」で結ぶ係り結びである。
三句「しきたへの」は、「枕」にかかる枕詞である。
四句「枕のうきて」は、「うき」が枕が「浮き」と「憂き」を掛ける掛詞である。
結句「止まらざるらん」は、とどまらないのだろう、の意で、「ざる」は打消、「らん」は原因を推量する助動詞の連体形である。返されてきた枕を、涙の川に浮いて流れていく枕に見立てている。
うく:枕が「浮く」意と、「憂く」を掛ける
しきたへ:敷妙。寝床に敷く布。「枕」などにかかる枕詞として用いる
ぢん:沈。香木の沈香
てうど:調度。身の回りの道具
- 作者
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源雅信
- 出典
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拾遺和歌集
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今日かとも明日とも知らぬ白菊の 知らず幾世を経べき我が身ぞ
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世の中を常なきものと聞きしかど つらきことこそ久しかりけれ