卯の花の垣根とのみや思はまし
賤の伏屋に煙立たずは
- 歌の意味
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ただ卯の花の垣根だとばかり思っただろう。身分の低い者の粗末な家から煙が立ちのぼっていなかったならば。
- 鑑賞
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巻第三 夏歌 144
詞書「卯花蔵宅といへる心をよめる」
「卯花蔵宅(卯の花が家を隠す)」という題で詠んだ歌である。粗末な家が卯の花にすっかり覆い隠されていて、そこから炊事の煙が立ちのぼらなければ、ただの卯の花の垣根だとばかり思っただろう、と詠む。家のあることを煙によってはじめて知るという趣向で、家を隠すほどに咲き誇る卯の花のさまを表している。卯の花の一連はここで結ばれる。
作者の「藤原敦経朝臣」は平安時代後期の廷臣である。詳しい伝は明らかでない。
初句「卯の花の」は、二句の「垣根」にかかる。
二句「垣根とのみや」の「のみ」は限定、「や」は疑問の係助詞で、三句の「まし」と係り結びをなす。本巻の第百三十九首から続く垣根の卯の花の歌を、ここで結ぶ。
三句「思はまし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、思っただろう、の意となる。ここで句切れとなり、四句以下と倒置の関係にある。
四句「賤の伏屋に」の「賤」は身分の低い者、「伏屋」は屋根の低い粗末な家をいう。
結句「煙立たずは」の「ずは」は打消の仮定条件で、煙が立たなかったならば、の意となる。三句の「まし」と呼応して反実仮想の構文を作る。本巻の第百八十三首、第百八十五首、第百八十六首では、五月雨の中の煙が詠まれる。
しづ:身分の低い者
ふせや:屋根の低い粗末な家
- 作者
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藤原敦経
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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卯の花のよそめなりけり山里の 垣根ばかりに降れる白雪
- 次の歌
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焼き捨てし古野の小野の真葛原 玉巻くばかりなりにけるかな