五月雨に室の八島を見わたせば
煙は浪の上よりぞ立つ
- 歌の意味
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五月雨の降る頃、室の八島を見渡すと、いつもは地から立つ煙が、波の上から立ちのぼっている。
- 鑑賞
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巻第三 夏歌 186
詞書「摂政右大臣に侍りける時、百首歌よませ侍りけるに、五月雨の心をよめる」
現在の摂政九条兼実がまだ右大臣であった頃、人々に百首歌を詠ませた際に、「五月雨」を題として詠んだ歌である。五月雨の頃に室の八島を見渡すと、いつもは地から立ちのぼる煙が、増水した水の波の上から立っている、と詠む。煙の立つ歌枕として名高い室の八島を、五月雨で一面水に覆われた景として描き、煙と波とを取り合わせた新鮮な趣向である。
作者の「源行頼朝臣」は平安時代後期の廷臣である。詳しい伝は明らかでない。
室の八島は下野国の歌枕で、水辺から煙のような水気が立ちのぼる地として詠まれた。
初句「五月雨に」は、五月雨の降る頃に、の意である。
二句「室の八島を」の「室の八島」は下野国の歌枕で、煙の立つ地として知られる。
三句「見わたせば」は、已然形に「ば」が付いた確定条件で、見渡すと、の意である。
四句「煙は浪の」は、煙は波の、の意である。前歌の第百八十五首で浦辺の煙が絶えたのに続き、本歌は思いがけず波の上に立つ煙を詠む。
結句「上よりぞ立つ」の「ぞ」は係助詞で、「立つ」と連体形で結ぶ。地が水に覆われ、煙が波の上から立つという意外な景を示す。
むろのやしま:下野国の歌枕で、煙の立つ地として詠まれた
みわたす:遠くまで見渡す
- 作者
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源行頼
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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五月雨は海人の藻塩木朽ちにけり 浦辺に煙絶えてほど経ぬ
- 次の歌
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五月雨は苫の雫に袖濡れて あなしほどけの浪のうきねや