照る月の影冴えぬれば浅茅原
雪の下にも虫は鳴きけり
- 歌の意味
-
照る月の光が冷たく冴えているので、浅茅原はまるで雪に覆われたように見え、その雪の下でも虫が鳴いていることだ。
- 鑑賞
-
巻第四 秋歌上 295
詞書「月前虫といへる心をよめる」
「月前虫(月の前の虫)」という題で詠んだ歌である。照る月の光が冷たく冴えわたるので、浅茅原は一面雪に覆われたように白く見え、その雪の下でも虫が鳴いている、と詠む。月光を雪に見立て、雪の下に虫の声が聞こえるという季節の取り合わせの意外さによって、秋の月夜の冴えた美しさを表している。
作者の「頼円法師」は伝の詳らかでない僧である。
本巻では月光を氷に見立てる歌が続いたが、本歌は月光を雪に見立てる。また本歌の三句と次歌の第二百九十六首の初句はともに「浅茅原」であり、本巻の巻末の第三百一首も同じく「照る月の」で詠み起こす。
初句「照る月の」は、照り輝く月の、の意である。本巻の巻末の第三百一首も同じ初句を置く。
二句「影冴えぬれば」の「影」は月の光、「冴え」は冷たく澄む意、「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形で、光が冴えたので、の意となる。
三句「浅茅原」は、丈の低い茅萱が一面に生えた野原である。次歌の第二百九十六首も「浅茅原」で詠み起こす。
四句「雪の下にも」は、月光に白く照らされた浅茅原を雪に見立て、その雪の下でも、の意である。
結句「虫は鳴きけり」の「けり」は気づきを表す。雪の下で虫が鳴くという意外な取り合わせによって、題の「月前虫」を表す。
あさぢはら:丈の低い茅萱が一面に生えた野原
- 作者
-
頼円
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
月影は消えぬ氷と見えながら さざ波寄する志賀の唐崎
- 次の歌
-
浅茅原葉末に結ぶ露ごとに 光を分けて宿る月影