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澄む水にさやけき影の映ればや
今宵の月の名に流るらん

歌の意味
澄んだ水に月の明るい光が映るからだろうか、今宵の月がその名を世に流し伝えているのは。
鑑賞
巻第五 秋歌下 336

詞書「後冷泉院御時、九月十三夜月宴侍りけるに、よみ侍りける」
 後冷泉天皇の時代に、九月十三夜の月の宴が催された折に詠んだ歌である。澄んだ水に月の明るい光が映るから、今宵の月はその名が広く世に流れ伝わっているのだろうか、と詠む。水に映る月の美しさと、十三夜の月の名高さとを、「流る」の語で結びつけている。
 作者の「大宮右大臣」は藤原俊家である。右大臣藤原頼宗の子で、藤原道長の孫にあたる。右大臣に至った。
 九月十三夜の月は、八月十五夜の月とともに名月とされた。次歌の第三百三十七首も十三夜の月を詠む。

 初句「澄む水に」は、澄みきった水に、の意で、月が映る場所を示す。
 二句「さやけき影の」の「さやけし」は明るく清らかな意で、「影」は月の光である。
 三句「映ればや」の「ばや」は、「ば」と疑問の係助詞「や」で、映るからだろうか、と原因を推し量る。「や」は結句の「らん」と連体形で結ぶ。
 四句「今宵の月の」は、九月十三夜の月をいう。次歌の第三百三十七首も「今宵」を詠む。
 結句「名に流るらん」の「名に流る」は評判が世に広く伝わる意で、「流る」は初句の「水」の縁語である。「らん」は現在推量の助動詞「らむ」である。

かげ:光、またその光に照らされた姿
ながる:流れる、名が世に広く伝わる
作者
藤原俊家
出典
千載和歌集
前の歌
草も木も秋の末葉は見えゆくに 月こそ色も変はらざりけれ
次の歌
秋の月千々に心を砕ききて 今宵一夜に堪へずもあるかな