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衣打つ音を聞くにぞ知られぬる
里遠からぬ草枕とは

歌の意味
衣を打つ音を聞いたことで、自然とわかったことだ。この旅寝の宿が人里から遠くないところにあるのだと。
鑑賞
巻第五 秋歌下 342

詞書「旅宿擣衣といへる心をよめる」
 「旅宿擣衣」、すなわち旅の宿で衣を打つ音を聞くという題で詠んだ歌である。衣を打つ砧の音が聞こえてきたことで、今夜の旅寝の場所が人里から遠くないところだと自然にわかった、と詠む。心細い旅寝のなかで、砧の音に人の暮らしの気配を感じ取っている。
 作者の「俊盛法師」は院政期の僧であるが、詳しい伝は明らかでない。
 本歌で擣衣の歌が結ばれる。前歌までの擣衣の歌が打つ人の心を思いやったのに対し、本歌は旅人の側から砧の音を聞いている。

 初句「衣打つ」は、題の「擣衣」をいう。本巻の第三百四十首の四句「衣打つなり」と同じ語を用いる。
 二句「音を聞くにぞ」の「ぞ」は係助詞で、三句の「ぬる」と連体形で結ぶ。音を聞くことによって、と知った理由を示す。
 三句「知られぬる」の「れ」は自発の助動詞「る」で、自然とわかった、の意である。ここで句切れとなり、四句以下と倒置の関係にある。
 四句「里遠からぬ」は、人里から遠くない、の意である。
 結句「草枕とは」の「草枕」は、草を結んで枕とすることから、旅寝、旅の宿をいう。「とは」で知った内容を示して結ぶ。

くさまくら:草を結んで枕とすることから、旅寝、旅の宿
作者
俊盛
出典
千載和歌集
前の歌
誰がためにいかに打てばか唐衣 千度八千度声の恨むる
次の歌
夕霧や秋のあはれをこめつらむ 分け入る袖に露の置きそふ