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故郷に訪ふ人あらば紅葉葉の
散りなむ後を待てと答へよ

歌の意味
故郷の家に私を訪ねてくる人があったら、紅葉が散ってしまった後まで待てと答えておくれ。
鑑賞
巻第五 秋歌下 358

詞書「紅葉留客といふ心をよめる」
 「紅葉留客」、すなわち紅葉が客を引き留めるという題で詠んだ歌である。紅葉に見とれて帰る気にならない自分の代わりに、故郷の家に訪ねてくる人があれば、紅葉が散ってしまった後まで待てと答えておくれ、と留守の者に言い置く形で詠む。紅葉に引き留められる客の心を、帰りを待たせるという意外な形で表している。
 作者の「素意法師」は俗名を藤原重経という。出家して素意と号した。

 初句「故郷に」の「故郷」は、古くからなじんだ土地、ここでは自分の家をいう。
 二句「訪ふ人あらば」は、訪ねてくる人があったら、と仮定する。ここで句切れとなる。
 三句「紅葉葉の」は、四句の「散りなむ」の主語を示す。
 四句「散りなむ後を」の「な」は完了の助動詞「ぬ」、「む」は推量の助動詞で、散ってしまうであろう後を、の意である。
 結句「待てと答へよ」は、命令の形を重ね、留守の者に答え方を言い置く。題の「留客」を、自分が帰らないという形で示す。

ふるさと:古くからなじんだ土地、自分の家
とふ:訪ねる
作者
素意
出典
千載和歌集
前の歌
君見むと心やしけむ竜田姫 紅葉の錦色を尽くせり
次の歌
山姫に千重の錦を手向けても 散る紅葉葉をいかでとどめん