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色変へぬ松吹く風の音はして
散るは柞の紅葉なりけり

歌の意味
色を変えない松を吹く風の音がしていて、それなのに散っているのは柞の紅葉なのであった。
鑑賞
巻第五 秋歌下 375

詞書「松間紅葉といへる心をよめる」
 「松間紅葉」、すなわち松の間に見える紅葉という題で詠んだ歌である。聞こえてくるのは色を変えない松を吹く風の音なのに、散っているのは松ではなく柞の紅葉であった、と詠む。音を立てる松と、音もなく散る柞とを対比させ、常緑の松の間に交じる紅葉を描いている。
 作者の「藤原朝仲」は院政期の歌人であるが、詳しい伝は明らかでない。
 本巻の第三百六十七首も紅葉の中に緑を残す松を詠み、次歌の第三百七十六首も落葉の中で緑を保つ松を詠む。

 初句「色変へぬ」は、色を変えない、の意で、常緑の松をいう。次歌の第三百七十六首の「色変へて」と、変わらぬものと変わるものとの対をなす。
 二句「松吹く風の」は、松を吹く風の、の意である。本巻の第三百六十七首の「松のむらだち」と同じく、紅葉の中の松を詠む。
 三句「音はして」の「は」は係助詞で、音はしていて、と、聞こえるものと見えるものとを分ける。
 四句「散るは柞の」の「柞」はナラやクヌギの類の木で、紅葉するものとして詠まれる。本巻の第三百六十八首第三百七十四首も柞を詠む。
 結句「紅葉なりけり」の「なり」は断定、「けり」は気づきの詠嘆で、散っているのは柞の紅葉だったのだ、と結ぶ。

ははそ:ナラやクヌギの類の木
作者
藤原朝仲
出典
千載和歌集
前の歌
吹き乱る柞が原を見渡せば 色なき風も紅葉しにけり
次の歌
故郷の庭は木の葉に色変へて かはらの松ぞ緑なりける