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故郷の庭は木の葉に色変へて
かはらの松ぞ緑なりける

歌の意味
荒れた古里の庭は落葉によって色を変えてしまい、かわらの松だけが緑なのであった。
鑑賞
巻第五 秋歌下 376

詞書「故郷落葉といへる心をよめる」
 「故郷落葉」、すなわち荒れた古里に散る落葉という題で詠んだ歌である。人の住まなくなった古里の庭は、散り敷いた木の葉によってすっかり色を変えてしまったが、かわらの松だけは緑のままであった、と詠む。落葉に埋もれた庭と緑を保つ松とを対比させ、荒れた古里の寂しさを描いている。
 作者の「惟宗広言」は平安時代末の官人で歌人である。今様にも通じ、家集に「惟宗広言集」がある。
 前歌の第三百七十五首が「色変へぬ松」を詠んだのに対し、本歌は「色変へて」と庭の変化を詠み、変わらぬ松と対比させる。
 なお本文の四句は「かはらの松そ」とあり、読み仮名の行の「かはらぬまつそ」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「故郷の」の「故郷」は、ここでは人の住まなくなって荒れた古い住まいをいう。題の「故郷」を示す。
 二句「庭は木の葉に」は、庭は散り敷いた木の葉によって、の意である。本巻の第三百六十九首の「庭の面」と同じく、落葉の積もる庭を詠む。
 三句「色変へて」は、色を変えて、の意で、前歌の第三百七十五首の「色変へぬ」と対をなす。
 四句「かはらの松ぞ」の「かはら」は、本文の表記に従えば屋根の瓦をいい、荒れた家の瓦の上の松と解される。読み仮名の行の「かはらぬ」であれば、色の変わらない松の意となる。「ぞ」は係助詞で、結句の「ける」と連体形で結ぶ。
 結句「緑なりける」の「けり」は気づきの詠嘆で、四句の「ぞ」を受けて連体形で結ぶ。松だけが緑であったと、変わってしまった庭との対比を示す。

ふるさと:人の住まなくなって荒れた古い住まい、旧都
かはら:屋根を葺く瓦
作者
惟宗広言
出典
千載和歌集
前の歌
色変へぬ松吹く風の音はして 散るは柞の紅葉なりけり
次の歌
散り積もる木の葉も風に誘はれて 庭にも秋の暮れにけるかな