旅寝する庵を過ぐるむら時雨
名残までこそ袖は濡れけれ
- 歌の意味
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旅寝をしている庵の上を通り過ぎてゆくにわか時雨よ。時雨が去ったあとの名残まで、袖は濡れていることだ。
- 鑑賞
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巻第八 羈旅歌 539
詞書「摂政右大臣の時、家の歌合に、旅歌とてよめる」
九条兼実が右大臣であった時の家の歌合で、旅の題で詠んだ歌である。旅寝をしている庵の上を通り過ぎてゆくにわか時雨よ、時雨が去ったあとの名残まで袖は濡れていることだ、と詠む。時雨が過ぎ去ったあとも袖が乾かないのは、旅の寂しさに流す涙のためであるという心をこめている。
作者の「藤原資忠」は、九条兼実の家の歌合に加わった平安時代末期の歌人である。
詞書の「摂政右大臣」は、本集の成立当時に摂政であった九条兼実を、歌合当時の右大臣の官で記したものである。
初句「旅寝する」は、旅寝をする、の意である。本巻の第五百三十六首、第五百三十八首と同じ初句をもつ。
二句「庵を過ぐる」の「庵」は旅の仮の宿りで、その上を通り過ぎる、の意である。
三句「むら時雨」は、ひとしきり降っては止むにわか時雨である。ここで句切れとなる。
四句「名残までこそ」の「名残」は時雨が過ぎ去ったあとに残るもの、「こそ」は強意の係助詞で、結句の「けれ」と已然形で結ぶ。
結句「袖は濡れけれ」の「けれ」は詠嘆の助動詞「けり」の已然形で、時雨が去ったあとまで袖は濡れていることだ、の意である。名残の雫に、旅の涙を重ねる。
むらしぐれ:ひとしきり降っては止む時雨
なごり:物事が過ぎ去ったあとに残るもの
- 作者
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藤原資忠
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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旅寝する木の下露の袖にまた 時雨降るなり小夜の中山
- 次の歌
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霰漏る不破の関屋に旅寝して 夢をもえこそ通さざりけれ