おほかたにさやけからぬか月影は
涙曇らぬ人に見せばや
- 歌の意味
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月の光は、誰が見てもそもそも明るく澄んではいないのだろうか。涙に目の曇っていない人に見せて確かめたいものだ。
- 鑑賞
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巻第九 哀傷歌 560
詞書「一条院隠れさせ給ひける年の秋、月を見てよみ侍りける」
一条院が崩御した年の秋、月を見て詠んだ歌である。月の光は誰が見てもそもそも澄んでいないのだろうか、涙に曇っていない人に見せて確かめたい、と詠む。名月がぼんやりとしか見えないのは、月のせいではなく自分の目が涙で曇っているからだと、遠回しに言うことで、尽きない悲しみを表している。
作者の「承香殿女御」は藤原元子である。左大臣藤原顕光の娘で、一条天皇の女御となった。
本巻の第五百五十二首も一条院崩御の翌年に詠まれた歌で、本歌は秋の月、第五百五十二首は春の桜によって亡き院を悼んでいる。
初句「おほかたに」は、一般に、誰にとっても、の意である。
二句「さやけからぬか」の「さやけから」は、明るく澄んでいる意の形容詞「さやけし」の未然形、「ぬ」は打消しの助動詞「ず」の連体形、「か」は疑問の終助詞で、澄んでいないのだろうか、の意である。
三句「月影は」の「月影」は月の光である。主語を後に置く倒置で、ここで句切れとなる。本巻では第五百七十六首、第五百九十四首、第六百三首にも、死者をしのんで見る月が詠まれる。
四句「涙曇らぬ」は、涙で曇っていない、の意で、自分の目は涙で曇っていることを裏に含む。
結句「人に見せばや」の「ばや」は自己の願望の終助詞で、人に見せたいものだ、の意である。
つきかげ:月の光
かくる:貴人が亡くなる
- 作者
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藤原元子
- 出典
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千載和歌集
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誰もみな止まるべきにはあらねども 後るるほどは猶ぞ悲しき
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悲しさに添へても物の悲しきは 別れのうちの別れなりけり