もろともに有明の月を見しものを
いかなる闇に君まどふらん
- 歌の意味
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一緒に有明の月を見たのに、今あなたはどのような闇の中で迷っているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第九 哀傷歌 576
詞書「相知れりける女身まかりにける時、月を見てよめる」
親しく契っていた女が亡くなった時、月を見て詠んだ歌である。一緒に有明の月を見たのに、今あなたはどのような闇に迷っているのだろうか、と詠む。逢瀬の明け方に二人で見た有明の月の明るさと、亡き人がさまよう死後の世界の闇とを対比させ、ひとり月を見る悲しみと亡き人への気づかいを表している。
作者の「藤原有信朝臣」は藤原実綱の子で、学問の家に生まれた平安時代後期の官人である。
本巻の第五百六十九首も「もろともに」「見しものを」と、本歌と同じ言葉の運びで、ともに見たものとひとり残された今とを対比している。
初句「もろともに」は、一緒に、の意である。本巻の第五百六十九首、第六百三首も同じ初句で始まる。
二句「有明の月を」の「有明の月」は夜が明けても空に残る月で、恋人と別れる明け方に見る月である。
三句「見しものを」の「ものを」は逆接の接続助詞で、見たのに、の意である。第五百六十九首の三句と同じ語である。
四句「いかなる闇に」は、死後にさまようどのような闇に、の意で、二句の有明の月の明るさと対比させる。
結句「君まどふらん」の「まどふ」は迷う意、「らん」は現在推量の助動詞で、今ごろ迷っているのだろうか、の意である。本巻の第五百五十五首も「闇にまどふ」と詠む。
ありあけ:夜が明けても空に月が残っているころ
まどふ:迷う、思い乱れる
あひしる:親しく交わる、男女が契りを結ぶ
- 作者
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藤原有信
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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胸に満つおもひをだにも晴るかさで 煙とならむことぞ悲しき
- 次の歌
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打ち鳴らす鐘の音にや長き夜も 明けぬなりとは思ひ知るらん