椎柴の露けき袖は七夕も
貸さぬにつけてあはれとや見ん
- 歌の意味
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涙の露に濡れた喪服の椎柴の袖を、七夕の織女星も、今年は衣を貸さないことにつけて、しみじみと哀れと見るだろうか。
- 鑑賞
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巻第九 哀傷歌 587
詞書「返し」
前歌の藤原実家の歌への、母の返歌である。露に濡れた椎柴の袖を、七夕の星も、衣を貸さないことにつけて哀れと見るだろうか、と詠む。夫を失った母もまた喪服の袖を涙に濡らしており、今年は衣を貸してもらえない織女星でさえ、その事情を知ってあわれに思うだろうと、子と悲しみを分かち合っている。
作者の「三位(右大臣母)」は藤原豪子である。権中納言藤原俊忠の娘で、右大臣藤原公能の妻となり、実定、実家らの母となった。本集の撰者藤原俊成の姉妹にあたる。
前歌の第五百八十六首との贈答で、前歌の「七夕」「貸さぬ」「椎柴」「露けかり」の語をそのまま受けて返している。
初句「椎柴の」は、椎柴で染めた鈍色の喪服をいう。前歌の三句「椎柴の」を受ける。
二句「露けき袖は」は、涙の露に濡れた袖は、の意で、前歌の結句「露けかりけり」を受ける。
三句「七夕も」は、七夕の織女星も、の意で、前歌の初句「七夕に」を受ける。
四句「貸さぬにつけて」は、今年は衣を貸さないことにつけても、の意で、前歌の二句「今年は貸さぬ」を受ける。
結句「あはれとや見ん」の「や」は疑問の係助詞で、推量の助動詞「ん」の連体形と結ぶ。しみじみと哀れと見るだろうか、の意である。
しひしば:椎の木の枝葉、またそれで染めた鈍色の喪服
たなばた:七夕の織女星、また七月七日の行事
- 作者
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藤原豪子
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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七夕に今年は貸さぬ椎柴の 袖しもことに露けかりけり
- 次の歌
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故郷に今日来ざりせば郭公 誰か昔を恋ひて鳴かまし