七夕に今年は貸さぬ椎柴の
袖しもことに露けかりけり
- 歌の意味
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例年なら七夕の星に衣を貸すのに、今年は貸すこともない喪服の椎柴色の袖こそ、ことのほか涙の露に濡れていることだ。
- 鑑賞
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巻第九 哀傷歌 586
詞書「大炊御門右大臣隠れ侍りて後、七月七日、母の三位のもとに消息のついでに遣はし侍りける」
父の大炊御門右大臣藤原公能が亡くなったのち、七月七日に、母の三位のもとへ便りを送るついでに贈った歌である。七夕に今年は貸さない椎柴の袖こそ、ことのほか露に濡れている、と詠む。七夕には織女星に衣を貸し供える習いがあったが、今年は喪中で喪服の身であるから貸すこともなく、その袖は涙に濡れているという、父を失った悲しみを、七夕の行事に寄せて母に伝えている。公能は応保元年(1161)に没した。
作者の「大納言実家」は右大臣藤原公能の子である。大納言に至った。兄に藤原実定がいる。
次歌の第五百八十七首は、本歌に答えた母の三位の返歌である。
初句「七夕に」は、七夕の織女星に、の意で、七月七日に織女星へ衣を貸し供える習いを踏まえる。
二句「今年は貸さぬ」の「ぬ」は打消しの助動詞「ず」の連体形で、喪中の今年は衣を貸さない、の意である。次歌の第五百八十七首は「貸さぬにつけて」と受けている。
三句「椎柴の」の「椎柴」は椎の木の枝葉で、それで染めた鈍色の喪服をいう。次歌の第五百八十七首も「椎柴の」で始まる。
四句「袖しもことに」の「しも」は強意の副助詞、「ことに」は格別に、の意である。
結句「露けかりけり」の「露けし」は露に濡れてしめっぽい意で、涙に濡れることをいう。「けり」は気づきの詠嘆である。七夕の頃の秋の露を重ねる。
しひしば:椎の木の枝葉、またそれで染めた鈍色の喪服
たなばた:七夕の織女星、また七月七日の行事
せうそこ:手紙、便り
- 作者
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藤原実家
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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数ふれば昔語りになりにけり 別れは今の心地すれども
- 次の歌
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椎柴の露けき袖は七夕も 貸さぬにつけてあはれとや見ん