わびつつは汝だに君に床馴れよ
交はさぬ夜半の枕なりとも
- 歌の意味
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思い悩みながら、せめておまえだけでもあの人の床に馴れ親しんでおくれ。たとえ二人で共に交わすことのない夜更けの枕であっても。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 900
詞書「忍びて物申しける女の、消息をだに通はしがたく侍りけるを、唐の枕の下に師子作りたるが、口の内に深く隠してつかはし侍りける」
人目を忍んで通じていた女に、手紙さえ通わせにくかったので、唐風の枕の下に作りつけた獅子の口の中に、歌を深く隠して送った時の歌である。思い悩みながら、せめておまえだけでもあの人の床に馴れ親しめ、共に交わすことのない夜の枕であっても、と詠む。枕の獅子に「汝」と呼びかけ、自分は共寝をすることができないが、せめて枕だけでも女の床に馴れてほしいと願っている。手紙を枕の獅子の口に隠して届けるという趣向とともに、逢えない恋の切なさを伝えている。
作者の「権大納言実家」は右大臣藤原公能の子である。権大納言に至り、兄に後徳大寺左大臣藤原実定がいる。
次歌の第九百一首は女からの返しで、二首が贈答をなす。本歌の四句「交はさぬ夜半の」を、返歌は二句でそのまま受けて応じている。
初句「わびつつは」の「わぶ」は思い悩む意で、「つつ」は継続を表す接続助詞である。思い悩みながら、の意である。
二句「汝だに君に」の「汝」は枕の下に作られた獅子への呼びかけである。「だに」は最小限を示す副助詞で、せめておまえだけでも、の意である。
三句「床馴れよ」の「床馴る」は寝床に馴れ親しむ意で、命令形で呼びかけている。二句の「汝」と同じ「なれ」の音を重ねている。ここで句切れとなる。
四句「交はさぬ夜半の」の「交はす」は枕を交わす、すなわち共寝をする意で、「ぬ」は打消の助動詞である。共寝をしない夜更けの、の意となる。次歌の第九百一首の二句と同じである。
結句「枕なりとも」の「とも」は逆接の仮定で、枕であっても、の意である。獅子が付いた枕そのものを指して結ぶ。
なれ:二人称の代名詞で、おまえ
とこなる:寝床に馴れ親しむ
かはす:枕を交わす、共寝をする
- 作者
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藤原実家
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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恋ひわびてうち寝る宵の夢にだに 逢ふとは人の見えばこそあらめ
- 次の歌
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嘆きつつ交はさぬ夜半の積もるには 枕も疎くならぬものかは