このもとはかく言の葉を見るたびに
頼みしかげのなきぞ悲しき
- 歌の意味
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父のもとで書かれたこの言の葉をこうして見るたびに、頼りにしていた木陰のような父の庇護がもうないことが悲しい。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌中 1106
詞書「返し」
前歌の第千百五首に対する藤原実家の返歌である。このもとでこのように書いた言の葉を見るたびに、頼りにしていた陰がないことが悲しい、と詠む。姉の多子が父の書写した歌集を形見と見ると詠んだのに対し、自分はそれを見るたびに、木陰のように頼りにしていた父がもういないことを思い知らされると答えている。前歌の木の縁を受けて「かげ」と結び、父を失った悲しみを共にしている。
作者の「大納言実家」は藤原実家である。右大臣藤原公能の子で、大納言に至った。藤原多子の弟にあたる。
前歌の第千百五首への返歌で、前歌の初句「このもとに」を「このもとは」と受け、「言の葉」を共有し、木の縁を「かげ」に転じて応じている。
初句「このもとは」の「このもと」は、前歌と同じく「木の下」と「此の許」を掛ける掛詞である。前歌の第千百五首の初句「このもとに」を受けている。
二句「かく言の葉を」の「かく」は「書く」と「斯く」を掛ける掛詞で、書いた言の葉を、このように、の意を重ねている。前歌の三句「言の葉を」と同じ語を用いている。
三句「見るたびに」は、見るたびごとに、の意である。
四句「頼みしかげの」の「かげ」は、木陰の意と、頼りとする父の庇護の意を重ねている。「木」の縁語である。
結句「なきぞ悲しき」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形の「悲しき」で結ぶ係り結びである。
かく:「書く」と「斯く」を掛ける
かげ:「木陰」の意と、頼りとする人の庇護の意を重ねる
- 作者
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藤原実家
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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このもとにかき集めたる言の葉を 別れし秋の形見とぞ見る
- 次の歌
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跡絶えて世をのがるべき道なれや 岩さへ苔の衣着てけり