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思ひやる心も尽きぬ時鳥
雲の幾重のほかに鳴くらん

歌の意味
はるかに思いを馳せる心も尽きてしまった。時鳥は、幾重にも重なった雲のさらに向こうで鳴いているのだろうか。
鑑賞
巻第三 夏歌 156

詞書「遠聞郭公といへる心をよみ侍りける」
 「遠聞郭公(遠く時鳥を聞く)」という題で詠んだ歌である。時鳥の声ははるか遠くからかすかに聞こえ、その鳴く場所に思いを馳せようとしても、思いの及ぶ限りを越えている、いったい幾重もの雲のさらに彼方で鳴いているのだろうか、と詠む。声の遠さを、思いやる心が尽きるほどの距離として表し、空の広がりを感じさせる一首である。
 作者の「権大納言実家」は藤原実家である。右大臣藤原公能の子で、権大納言に至った。兄に左大臣藤原実定がいる。

 初句「思ひやる」は、遠くに思いを馳せる、の意である。
 二句「心も尽きぬ」の「ぬ」は完了の助動詞で、思いを馳せる心も尽きてしまった、の意となる。ここで句切れとなる。
 三句「時鳥」は、四句以下の主語を示す。
 四句「雲の幾重の」は、幾重にも重なった雲の、の意である。
 結句「ほかに鳴くらん」の「ほか」は外、向こうの意、「らん」は現在推量の助動詞である。幾重もの雲のさらに向こうで鳴いているのだろう、と推し量る。次歌の第百五十七首、次々歌の第百五十八首は、雲の底に鳴く時鳥を詠む。

おもひやる:遠くに思いを馳せる
いくへ:幾重
作者
藤原実家
出典
千載和歌集
前の歌
尋ねても聞くべきものを時鳥 人頼めなる夜半の一声
次の歌
時鳥なほ初声をしのぶ山 夕ゐる雲の底に鳴くなり