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時鳥なほ初声をしのぶ山
夕ゐる雲の底に鳴くなり

歌の意味
時鳥はなお初音をひそめて忍んでいるのか、信夫山の、夕方にかかる雲の奥深くで鳴いているようだ。
鑑賞
巻第三 夏歌 157

詞書「暮天郭公といへる心をよみ侍りける」
 「暮天郭公(夕暮れの空の時鳥)」という題で詠んだ歌である。時鳥はまだ初音をはっきりとは聞かせず、声を忍んでいるのか、信夫山にかかる夕方の雲の奥深くで鳴いている、と詠む。「しのぶ」に、声を「忍ぶ」意と陸奥の歌枕「信夫山」とを掛け、夕雲の奥から聞こえるくぐもった初音を描いている。
 作者の「仁和寺法親王」は守覚法親王である。後白河天皇の第二皇子で、仁和寺に入り、仁和寺の御室となった。和歌を好み、多くの歌人に百首歌を詠ませた。

 初句「時鳥」は、一首の主題を示す。
 二句「なほ初声を」の「なほ」は、まだ、やはり、の意で、初声をなおも、の意となる。
 三句「しのぶ山」は、初声を「忍ぶ」意と、陸奥国の歌枕「信夫山」とを掛ける。本巻の第百五十首「しのぶるころは」も、時鳥が声をひそめるさまを詠む。
 四句「夕ゐる雲の」の「ゐる」は雲がかかる、とどまる意で、夕方に山にかかる雲の、の意である。詞書の「暮天」を表す。
 結句「底に鳴くなり」の「なり」は音や声をもとに判断する推定の助動詞である。次歌の第百五十八首も同じ「雲の底に鳴くなり」で結び、二首は結句を共有して並ぶ。

しのぶやま:声を「忍ぶ」意と、陸奥国の歌枕「信夫山」を掛ける
はつこゑ:その年初めて聞く鳴き声
ゐる:雲がかかる、とどまる
作者
守覚法親王
出典
千載和歌集
前の歌
思ひやる心も尽きぬ時鳥 雲の幾重のほかに鳴くらん
次の歌
風越を夕越えくれば時鳥 麓の雲の底に鳴くなり