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君恋ふる身は大空にあらねども
月日を多く過ぐしつるかな

歌の意味
あなたを恋い慕う我が身は大空ではないけれども、大空が月や日を渡らせるように、多くの月日を過ごしてしまったことだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 675

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 君を恋する身は大空ではないけれど、月日を多く過ごしてしまった、と詠む。大空を月や日が渡っていくことに寄せて、自分は大空でもないのに月日ばかりを数多く過ごしてきたと、逢えないまま長い年月を恋い続けてきたことを機知をもって詠んでいる。
 作者の「前中納言伊房」は藤原伊房である。権中納言藤原行経の子で、藤原行成の孫にあたる。権中納言に至り、能書家として知られた。
 本巻の第六百九十首も初句を「君恋ふる」とする。

 初句「君恋ふる」は、あなたを恋い慕う、の意である。第六百九十首の初句と同じ句である。
 二句「身は大空に」は、我が身は大空で、の意である。
 三句「あらねども」の「ね」は打消しの助動詞「ず」の已然形で、「ども」が付いて逆接となる。大空ではないけれども、の意である。
 四句「月日を多く」の「月日」は、空を渡る月と日の意と、年月の意を重ね、二句の「大空」と縁語になる。
 結句「過ぐしつるかな」の「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形、「かな」は詠嘆で、過ごしてしまったことだ、の意である。

つきひ:空を渡る月と日の意と、年月の意を重ねる
作者
藤原伊房
出典
千載和歌集
前の歌
またもなくただ一筋に君思ふ 恋路に惑ふ我や何なる
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琴の音に通ひ初めぬる心かな 松吹く風にあらぬ身なれど