- 歌の意味
-
ほかに比べるものもなく、ただひたすらにあなたを思う。その恋の道に迷っている私は、いったい何者なのだろう。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌一 674
詞書は前の歌に続き「題しらず」
ほかにないほどただ一筋に君を思い、恋路に惑う私はいったい何なのだろう、と詠む。一筋の道であるのに迷うという矛盾をつき、ひたすらに思い詰めるあまり自分を見失っている心を詠んでいる。
作者の「大宮前太政大臣」は藤原伊通である。権大納言藤原宗通の子で、太政大臣に至り、九条大相国、大宮大相国と呼ばれた。
本巻の第六百七十八首も「恋路に惑ふ」と同じ句を詠み、恋の道に迷う心に道しるべを求めている。
初句「またもなく」は、ほかに二つとなく、の意である。
二句「ただ一筋に」は、ただひたすらに、の意である。「一筋」は道の縁で四句の「恋路」と響き合う。
三句「君思ふ」は、あなたを思う、の意である。
四句「恋路に惑ふ」の「恋路」は恋を道にたとえた語で、恋の道に迷う、の意である。第六百七十八首の四句と同じ句である。
結句「我や何なる」の「や」は疑問の係助詞で、「なる」の連体形で結ぶ。私は何者なのだろう、の意で、一筋の道に迷う不思議を自らに問いかける。
こひぢ:恋を道にたとえた語
まどふ:迷う、途方に暮れる
- 作者
-
藤原伊通
- 出典
-
千載和歌集
- 前の歌
-
たよりあらば海人の釣り舟言伝てむ 人をみるめに求めわびぬる
- 次の歌
-
君恋ふる身は大空にあらねども 月日を多く過ぐしつるかな