琴の音に通ひ初めぬる心かな
松吹く風にあらぬ身なれど
- 歌の意味
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琴の音に、早くも心が通い始めたことだ。琴の音に通うという、松を吹く風でもない身であるのに。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 676
詞書「后の宮に初めて参れりける女房の、琴弾くを聞かせ給うて、詠みたまひける」
中宮のもとに初めて出仕した女房が琴を弾くのを聞いて、天皇が詠んだ歌である。琴の音に心が通い始めた、松吹く風ではない身なのに、と詠む。琴の音は松風の音に通うとされたことを踏まえ、松風でもない自分の心が琴の音に通い始めたと詠んで、琴を弾く新参の女房に心ひかれたことを優雅に伝えている。「琴の音に峰の松風通ふらしいづれの緒よりしらべそめけん」(拾遺和歌集、斎宮女御)を踏まえる。
作者の「二条院御製」は、後白河天皇の第一皇子で第七十八代の天皇であった二条院の詠んだ歌を示す。和歌を好み、在位中に内裏で歌会をたびたび催したが、二十三歳で崩じた。
本巻の第六百七十二首の「通ひ路」、第六百七十七首の「夢の通ひ路」と、「通ふ」をめぐる歌が並ぶ。
初句「琴の音に」は、女房の弾く琴の音に、の意である。
二句「通ひ初めぬる」の「通ふ」は心が通う意、「初め」は…し始める意の「初む」の連用形、「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形で、通い始めた、の意である。第六百七十二首の三句「通ひ路に」と同じく「通ふ」を詠む。
三句「心かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、ここで句切れとなる。
四句「松吹く風に」は、松を吹く風に、の意で、琴の音と松風の音が通い合うとする古歌の趣を踏まえる。
結句「あらぬ身なれど」の「なれ」は断定の助動詞「なり」の已然形で、「ど」が付いて逆接となる。松風ではない身であるけれども、の意である。
きさいのみや:皇后、中宮
まゐる:宮中に出仕する
かよふ:心が通じる、通い合う
- 作者
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二条院
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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君恋ふる身は大空にあらねども 月日を多く過ぐしつるかな
- 次の歌
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はかなしや枕定めぬうたた寝に ほのかに迷ふ夢の通ひ路