なれて後つらからましに比ぶれば
無き名はことの数ならぬかな
- 歌の意味
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親しくなった後でつれなくされたならばどんなにつらいだろうかということに比べれば、根も葉もない浮き名など、物の数にも入らないことだ。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 728
詞書「時々もの申し交はしける人に、名の立つは知らぬかと、人の告げければ詠める」
時々言葉を交わしていた人とのことで、浮き名が立っているのを知らないのかと人が告げたので詠んだ歌である。親しくなった後でつれなくされたらどれほどつらいかに比べれば、根も葉もない浮き名など物の数でもない、と詠む。噂を気にかけるよりも、深い仲になった後の心変わりのほうがずっと恐ろしいと、恋の行く末を見通した女の心を表している。
作者の「三宮家越後」は三宮輔仁親王の家に仕えた女房である。経歴の詳細は多く伝わらない。
本巻の第七百二十五首は本歌と同じ初句「なれて後」で始まり、馴れ親しんだ後の別れを思う点でも通い合う。次歌の第七百二十九首も、立った浮き名をめぐる女の歌である。
初句「なれて後」は、親しくなった後に、の意である。本巻の第七百二十五首も同じ初句で始まる。
二句「つらからましに」の「まし」は反実仮想の助動詞で、つれなくされたならばつらいだろうことに、の意である。
三句「比ぶれば」は、比べると、の意である。
四句「無き名はことの」の「無き名」は根も葉もない噂、浮き名をいう。次歌の第七百二十九首の四句「たちけん名だに」と、浮き名を詠む点で対応する。
結句「数ならぬかな」の「数ならぬ」は取るに足りない、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。物の数にも入らないことだ、の意である。
なきな:根も葉もない噂。無実の浮き名
- 作者
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越後
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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いかばかり恋路は遠きものなれば 年は行けども逢ふ夜なからん
- 次の歌
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あひ見むと思ひな寄りそ白波の たちけん名だに惜しき汀を