あひ見むと思ひな寄りそ白波の
たちけん名だに惜しき汀を
- 歌の意味
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逢おうなどと思って近寄ってこないでほしい。白波が立つように立ってしまった浮き名でさえ惜しく思われる、この汀なのだから。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 729
詞書「大納言重通、少将に侍りける時、名立つこと侍りけるを、同じくはまことになさばやと言ひ遣はして侍りければ、詠みて遣はしける」
大納言藤原重通が少将であった時、二人の間に浮き名が立ったのを、同じことなら本当にしてしまいたいと言ってよこしたので、詠んで贈った歌である。逢おうと思って寄ってこないでほしい、白波のように立った名さえ惜しい汀なのだから、と詠む。噂を本当にしようという男の誘いを、波の寄せる汀に寄せて、きっぱりと退けている。
作者の「法性寺入道前太政大臣家参川」は、法性寺入道前太政大臣藤原忠通の家に仕えた女房である。経歴の詳細は多く伝わらない。
前歌の第七百二十八首に続き、立った浮き名をめぐる女の歌が並ぶ。前歌が無き名を物の数ではないとしたのに対し、本歌は立った名さえ惜しいとしており、浮き名への態度が対照的である。
初句「あひ見むと」は、逢おうと、の意である。男の言葉を受けている。
二句「思ひな寄りそ」の「な…そ」は禁止を表し、思って近寄るな、の意である。「寄り」は三句の「白波」の縁語となる。ここで句切れとなる。
三句「白波の」は、白波が立つように、の意で、四句の「たち」を導く。
四句「たちけん名だに」の「たち」は、白波が立つ意と、浮き名が立つ意を掛ける。「けん」は過去推量の助動詞「けむ」、「だに」は類推を表す副助詞で、立ってしまったであろう名でさえ、の意である。前歌の四句「無き名」と、浮き名を詠む点で対応する。
結句「惜しき汀を」の「汀」は波の打ち寄せる水際で、「を」は詠嘆を込めて理由を示す。名さえ惜しいこの汀なのに、の意で、「寄り」「白波」「たち」とともに波の縁語を連ねる。
たつ:白波が立つ意と、浮き名が立つ意を掛ける
みぎは:波の打ち寄せる水際
なたつ:浮き名が立つ。噂になる
- 作者
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参川
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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なれて後つらからましに比ぶれば 無き名はことの数ならぬかな
- 次の歌
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恋ひ死なん身は惜しからず逢ふことに 代へんほどまでと思ふばかりぞ