衣手に落つる涙の色なくは
露とも人に言はましものを
- 歌の意味
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袖に落ちる涙に紅の色がなかったならば、これは露なのだと人に言ってごまかせただろうに。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 740
詞書「忍ぶ恋の心を詠み侍りける」
「忍ぶ恋」の心を詠んだ歌である。袖に落ちる涙に色がなかったならば、露だとでも人に言えただろうに、と詠む。恋の悲しみのあまり紅に染まった涙は、露と言い紛らわすこともできず、人に恋を知られてしまうと、忍ぶ恋の苦しさを表している。
作者の「二条院内侍参川」は二条天皇に仕えた内侍である。経歴の詳細は多く伝わらない。
「涙の色」は本巻の第七百六首、第七百二十一首にも詠まれる。第七百二十一首が涙の色を相手に見せたいと詠んだのに対し、本歌は人に知られまいとして涙の色を嘆いており、同じ涙の色をめぐって見せたい思いと隠したい思いとが対照的である。次歌の第七百四十一首も同じ「忍ぶ恋」の題で詠まれている。
初句「衣手に」の「衣手」は袖の意である。
二句「落つる涙の」は、袖に落ちる涙の、の意である。
三句「色なくは」の「は」は仮定を表し、色がなかったならば、の意である。結句の「まし」と呼応する。「涙の色」は第七百六首、第七百二十一首にも詠まれる。
四句「露とも人に」は、露だとでも人に、の意で、涙を露と言い紛らわすことをいう。
結句「言はましものを」の「まし」は反実仮想の助動詞、「ものを」は逆接の詠嘆で、言えただろうに、の意である。本巻の第七百二十六首の結句「立てましものを」と同じ形をとる。
ころもで:袖
- 作者
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参川
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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あはれとも枕ばかりや思ふらむ 涙絶えせぬ夜半の気色を
- 次の歌
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思ふこと忍ぶにいとど添ふものは 数ならぬ身の嘆きなりけり