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思ふこと忍ぶにいとど添ふものは
数ならぬ身の嘆きなりけり

歌の意味
恋しく思うことを人に知られまいと忍んでいるうえに、いっそう加わってくるものは、物の数にも入らない我が身の嘆きであったことだ。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 741

詞書は前の歌に続き「忍ぶ恋の心を詠み侍りける」
 前歌と同じく「忍ぶ恋」の心を詠んだ歌である。思いを忍ぶうえにいっそう加わるものは、数ならぬ身の嘆きであった、と詠む。恋を人に隠す苦しさに加えて、身分の低い自分では相手に釣り合わないという嘆きが重なり、恋がいっそう苦しくなる心を表している。
 作者の「殷富門院大輔」は藤原信成の娘である。後白河天皇の皇女殷富門院亮子内親王に仕えた女房歌人で、多作の歌人として知られる。小倉百人一首にも歌が採られている。
 本巻の第七百七十三首も「身は数ならず」と詠み、我が身の数ならぬことを嘆く点で通い合う。

 初句「思ふこと」は、恋しく思うことを、の意である。
 二句「忍ぶにいとど」の「忍ぶ」は人に知られないように隠す意、「いとど」は、いっそう、の意である。
 三句「添ふものは」は、加わってくるものは、の意である。
 四句「数ならぬ身の」の「数ならぬ」は物の数にも入らない、取るに足りない、の意で、身分の低い我が身をいう。本巻の第七百七十三首の四句「身は数ならず」と同じ嘆きを詠む。
 結句「嘆きなりけり」の「けり」は気づきの詠嘆を表す助動詞で、嘆きであったことだ、の意である。

しのぶ:恋心を人に知られないように隠す
作者
殷富門院大輔
出典
千載和歌集
前の歌
衣手に落つる涙の色なくは 露とも人に言はましものを
次の歌
行き返る心に人の馴るればや 逢ひ見ぬ先に恋しかるらん