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あはれとも枕ばかりや思ふらむ
涙絶えせぬ夜半の気色を

歌の意味
気の毒だと、枕だけは思ってくれているだろうか。涙の絶えることのない、夜更けの私のありさまを。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 739

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 涙の絶えない夜更けのありさまを、気の毒だと枕だけは思っているだろうか、と詠む。夜ごとに泣き明かす自分の姿を知るのは、涙を受け止める枕ばかりで、つれない恋人は少しも哀れんでくれないという孤独な嘆きを、枕を擬人化して表している。
 作者の「朝恵法師」は平安時代後期の僧である。経歴の詳細は多く伝わらない。

 初句「あはれとも」は、気の毒だとも、いとおしいとも、の意である。
 二句「枕ばかりや」の「ばかり」は限定の副助詞、「や」は疑問の係助詞で、三句の「らむ」と係り結びをなす。枕だけが、の意で、枕を擬人化している。
 三句「思ふらむ」の「らむ」は現在推量の助動詞で、二句の「や」の結びである。思っているだろうか、の意である。ここで句切れとなり、四句以下と倒置の関係にある。
 四句「涙絶えせぬ」は、涙の絶えることのない、の意である。
 結句「夜半の気色を」の「夜半」は夜更け、「気色」はありさまで、夜更けの私のありさまを、の意である。初句の「あはれとも」へ返る。

よは:夜更け。夜中
けしき:ようす。ありさま
作者
朝恵
出典
千載和歌集
前の歌
うたた寝の夢に逢ひ見て後よりは 人も頼めぬ暮れぞ待たるる
次の歌
衣手に落つる涙の色なくは 露とも人に言はましものを