忘らるる憂き名はさても立ちにけり
心の内は思ひ分くとも
- 歌の意味
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忘れられたというつらい噂は、それでもやはり立ってしまったことだ。私の心の内では、深い仲ではなかったとわきまえているとしても。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 771
詞書「睦ましくはなくて、忘られにける人に遣はしける」
それほど親しい仲ではないうちに忘れられてしまった人に贈った歌である。忘れられたというつらい噂はそれでも立ってしまった、心の内ではわきまえていても、と詠む。深い仲になったわけでもないのに、捨てられた女という不名誉な噂だけが立ってしまったことを、相手に訴えている。
作者の「大江維順女」は大江維順の娘である。経歴の詳細は多く伝わらない。
第七百二十八首、第七百二十九首も、立った浮き名をめぐる女の歌である。第七百二十八首が無き名を気にかけず、第七百二十九首が立った名を惜しんだのに対し、本歌は深い仲でもないのに立った憂き名を嘆いている。
初句「忘らるる」の「るる」は受身の助動詞「る」の連体形で、忘れられる、の意である。
二句「憂き名はさても」の「憂き名」はつらい噂、不名誉な評判で、「さても」は、それでもやはり、の意である。
三句「立ちにけり」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「けり」は詠嘆で、立ってしまったことだ、の意である。ここで句切れとなり、四句以下と倒置の関係にある。
四句「心の内は」は、私の心の中では、の意である。
結句「思ひ分くとも」の「思ひ分く」は判別してわきまえる意で、「とも」は逆接で、深い仲でなかったとわきまえているとしても、の意である。
うきな:つらい噂。不名誉な評判
おもひわく:判別してわきまえる
むつまし:親しい
- 作者
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大江維順女
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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おのづからつらき心も変はるやと 待ち見むほどの命ともがな
- 次の歌
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世とともにつれなき人を恋草の 露こぼれます秋の夕風