数ならぬ身にも心のあり顔に
一人も月を眺めつるかな
- 歌の意味
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人の数にも入らない身にも、心があるかのような顔をして、独りで月を眺めてしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 819
詞書「藤原仲実朝臣、備中守にまかれりける時、具して下りたりけるを、思ひ薄くなりて後、月を見て詠み侍りける」
藤原仲実が備中守として任国に下った時、作者は伴われて下ったが、仲実の愛情が薄れた後、月を見て詠んだ歌である。数ならぬ身にも心があるような顔をして、独りで月を眺めたことだ、と詠む。遊女という取るに足りない身である自分が、物の情けを知る人のように独り月を眺めて物思いにふけっていると、自らを卑下しながらも、捨てられかけた身の悲しみを隠しきれずにいる。
作者の「遊女戸戸」は、藤原仲実に伴われて備中国に下った遊女である。経歴の詳細は多く伝わらない。詞書の「藤原仲実朝臣」は藤原能成の子で、備中守などを務め、堀河百首の作者の一人である。
初句「数ならぬ」は、物の数にも入らない、取るに足りない、の意で、遊女である自らを卑下する。
二句「身にも心の」は、そのような身にも心が、の意である。
三句「あり顔に」の「あり顔」は、いかにもあるような顔つきで、心があるかのような顔をして、の意である。
四句「一人も月を」は、独りで月を、の意で、仲実の愛情が薄れて独りになった身を示す。
結句「眺めつるかな」の「眺む」は物思いにふけってぼんやり見つめる意、「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形、「かな」は詠嘆の終助詞である。
ありがほ:いかにもそうであるような顔つき
ながむ:物思いにふけってぼんやり見つめる
ぐす:連れ立つ、伴う
- 作者
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戸々
- 出典
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千載和歌集
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思ひわびさても命はあるものを 憂きに堪へぬは涙なりけり
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