思ひわびさても命はあるものを
憂きに堪へぬは涙なりけり
- 歌の意味
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恋に思い悩んで、それでも命はこうして長らえているのに、つらさに堪えきれずにこぼれるのは涙であったよ。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌三 818
詞書「題しらず」
思い悩んで、それでも命はあるのに、つらさに堪えられないのは涙であった、と詠む。恋のつらさに思い悩み、死んでしまいそうに思いながらも命はなお長らえているのに、涙だけはつらさに堪えきれずにあふれ出てしまうという、命と涙とを対比させた歌である。
作者の「道因法師」は藤原清孝の子である。俗名は敦頼で、晩年まで和歌に深く執心したことで知られる。小倉百人一首にも歌が採られている。
前歌までの涙に濡れる袖の歌を受け、本歌は涙そのものに目を向けている。本巻の第八百三十三首は、命こそつらいもので、生きているからこそ人をつらく思うと詠み、同じく命とつらさを結びつける点で本歌と対応する。
初句「思ひわび」の「思ひわぶ」は、思い悩んで気落ちする意である。
二句「さても命は」の「さても」は、それでもやはり、の意で、思い悩みながらも命は、の意である。本巻の第八百三十三首の初句「命こそ」と同じく、命を詠む。
三句「あるものを」の「ものを」は逆接の接続助詞で、命は長らえているのに、の意である。
四句「憂きに堪へぬは」の「憂き」はつらさ、「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形で、つらさに堪えきれないのは、の意である。
結句「涙なりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、涙であったよ、と二句の「命」に対して「涙」を示す。
おもひわぶ:思い悩み気落ちする
- 作者
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道因
- 出典
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千載和歌集
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よしさらば涙に朽ちね唐衣 干すも人目を忍ぶ限りぞ
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数ならぬ身にも心のあり顔に 一人も月を眺めつるかな