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よしさらば涙に朽ちね唐衣
干すも人目を忍ぶ限りぞ

歌の意味
ええ、それならば涙で朽ちてしまえ、唐衣よ。干すのも、人目を忍んでいる間だけのことなのだ。
鑑賞
巻第十三 恋歌三 817

詞書は前の歌に続き「歌合し侍りける時詠める」
 前歌と同じく歌合で詠んだ歌である。ええ、それならば涙で朽ちてしまえ、唐衣よ、干すのも人目を忍ぶ間だけのことだ、と詠む。濡れた衣を干すのは涙を人に悟られまいとするためであったが、もはや恋を隠し通すことにも疲れ、それならいっそ朽ちてしまえと衣に呼びかける、捨て身の心を表している。
 作者の「顕昭法師」は左京大夫藤原顕輔の猶子である。六条藤家の歌学者として知られ、「袖中抄」などの歌学書を著した。
 前歌の涙にまかせる袂を受けて、本歌は涙に朽ちてしまえと突き放し、涙に濡れる袖の歌の流れをさらに一歩進めている。本巻の第八百二十首は「涙にや朽ち果てなまし唐衣」と、同じ「涙」「朽ち」「唐衣」を用いながら、朽ちずにすんだ衣を詠み、本歌と反転した構図をなす。

 初句「よしさらば」の「よし」は、ええままよ、と放任する意の副詞、「さらば」は、それならば、の意である。
 二句「涙に朽ちね」の「ね」は完了の助動詞「ぬ」の命令形で、涙で朽ちてしまえ、の意である。ここで句切れとなる。本巻の第八百二十首の初句と二句「涙にや朽ち果てなまし」と同じく、涙で朽ちる衣を詠む。
 三句「唐衣」は唐風の美しい衣で、衣の美称である。二句の「朽ちね」と呼びかける対象を示す。本巻の第八百二十首の三句と同じ語である。ここで句切れとなる。
 四句「干すも人目を」は、衣を干すのも人目を、の意である。
 結句「忍ぶ限りぞ」の「限り」は、〜する間だけ、の意、「ぞ」は強意の終助詞で、人目を忍んでいる間だけのことだ、の意である。

からころも:唐風の美しい衣。衣の美称
作者
顕昭
出典
千載和歌集
前の歌
しばしこそ濡るる袂も絞りしか 涙に今は任せてぞ見る
次の歌
思ひわびさても命はあるものを 憂きに堪へぬは涙なりけり