古典和歌stream

逢ふならぬ恋慰めのあらばこそ
つれなしとても思ひ絶えなめ

歌の意味
逢うこと以外に、恋の苦しさを慰めるものがあるならば、あの人がつれないからといって、思いを断ち切ることもできるだろうに。
鑑賞
巻第十二 恋歌二 736

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 逢うこと以外に恋の慰めがあるならば、つれないからといって思いを断つこともできようが、と詠む。恋の苦しさを癒やすものは相手に逢うことのほかになく、だからこそ冷たくされても思い切ることができないという、逃れようのない恋の嘆きを表している。
 作者の「道因法師」は藤原清孝の子である。俗名は敦頼で、晩年まで和歌に深く執心したことで知られる。小倉百人一首にも歌が採られている。
 結句の「思ひ絶えなめ」は、次歌の第七百三十七首の上の句「今は思ひも絶えなまし」と同じく、思いを断ち切ることを仮定して詠み、思い切れない恋を詠む二首が並んでいる。第七百二十三首も、逢うことよりほかに涙を止めるものはないと詠んでいる。

 初句「逢ふならぬ」は、逢うことではない、の意で、二句の「恋慰め」にかかる。
 二句「恋慰めの」は、恋の苦しさを慰めるもの、の意である。
 三句「あらばこそ」の「ばこそ」は仮定を強める形で、あるならばこそ、の意である。「こそ」は結句の「なめ」と係り結びをなす。
 四句「つれなしとても」は、つれないからといっても、の意である。
 結句「思ひ絶えなめ」の「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「め」は推量の助動詞「む」の已然形で、三句の「こそ」の結びである。思いを断ち切ることもできようが、の意で、実際にはできないという含みをもつ。次歌の三句「絶えなまし」と同じ思いを詠む。

こひなぐさめ:恋の苦しさを慰めるもの
おもひたゆ:思いを断ち切る
作者
道因
出典
千載和歌集
前の歌
恋しともまたつらしとも思ひやる 心いづれか先に立つらん
次の歌
つれなさに今は思ひも絶えなまし この世一つの契りなりせば