つれなさに今は思ひも絶えなまし
この世一つの契りなりせば
- 歌の意味
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あの人のつれなさに、今はもう思いも断ち切ってしまうだろうに。もしこの恋がこの世一つだけの因縁であったならば。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌二 737
詞書は前の歌に続き「題しらず」
あの人のつれなさに、今はもう思いも断ってしまうだろうに、この世一つだけの契りであったならば、と詠む。これほど冷たくされても思い切れないのは、この恋が前世から結ばれた深い因縁によるものだからだと考え、仏教の三世の因縁を恋に重ねて、思い切れぬ恋の苦しさを表している。
作者の「顕昭法師」は左京大夫藤原顕輔の猶子である。六条藤家の歌学者として知られ、「袖中抄」などの歌学書を著した。
前歌の第七百三十六首の結句「思ひ絶えなめ」と本歌の上の句「思ひも絶えなまし」は、ともに思いを断ち切ることを仮定して、それができない恋を詠み、二首が対をなしている。本巻の第七百七十五首も「先の世」の契りを詠む。
初句「つれなさに」は、あの人のつれなさのために、の意である。
二句「今は思ひも」は、今はもう思いも、の意である。
三句「絶えなまし」の「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「まし」は反実仮想の助動詞で、結句の「せば」と呼応し、断ち切ってしまうだろうに、の意である。ここで句切れとなり、四句以下と倒置の関係にある。前歌の結句「思ひ絶えなめ」と同じ思いを詠む。
四句「この世一つの」は、この世だけの、の意で、前世や来世にわたらない、という含みをもつ。
結句「契りなりせば」の「契り」は因縁、宿縁の意で、「せば」は反実仮想の条件である。この世一つの因縁であったならば、の意である。
ちぎり:前世からの因縁。宿縁
- 作者
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顕昭
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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逢ふならぬ恋慰めのあらばこそ つれなしとても思ひ絶えなめ
- 次の歌
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うたた寝の夢に逢ひ見て後よりは 人も頼めぬ暮れぞ待たるる