君にのみ下の思ひはかはしまの
水の心は浅からなくに
- 歌の意味
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あなたにだけ、心の奥の思いは通わせているのに。川島の水の底が浅くないように、私の心は浅くはないのに。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 865
詞書「忍びてものいひ侍りける女の、常に心ざしなしと怨じければ、つかはしける」
人目を忍んで通じていた女が、いつも愛情がないと恨み言を言うので、送った歌である。あなたにだけ心の奥の思いを交わしているのに、川島の水のように私の心は浅くはないのに、と詠む。地名の川島に思いを「交はし」の意を掛け、川の水の深さに寄せて、自分の愛情が浅くないことを訴えている。忍ぶ恋であるために表に出せない思いを、水面の下に流れる水になぞらえている。
作者の「従三位季行」は藤原季行である。院政期の公卿で、従三位に至った。
初句「君にのみ」の「のみ」は限定の副助詞で、あなたにだけ、の意である。
二句「下の思ひは」の「下」は心の奥、内心のことで、表に出さない思いを指す。水面の下を流れる水と重ね、四句の「水」の縁語となる。
三句「かはしまの」の「かはしま」は、地名の「川島」と、思いを「交はし」の意とを掛ける。あなたにだけ思いを交わしている、の意と、川島の水、の意とが重なる。
四句「水の心は」の「水の心」は水の深さ、水の底のさまをいい、自分の心をたとえている。
結句「浅からなくに」の「なく」は打消の助動詞「ず」のク語法、「に」は詠嘆を含む接続助詞で、浅くはないのに、の意である。相手の恨みに対して、心の深さを訴えて結ぶ。
したのおもひ:心の奥に秘めた思い
かはしま:地名の「川島」と、思いを「交はし」の意とを掛ける
- 作者
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藤原季行
- 出典
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千載和歌集
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契りしももろともにこそ契りしか 忘れば我も忘れましかば
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思ひきや年の積もるは忘られて 恋に命の絶えんものとは