思ひきや年の積もるは忘られて
恋に命の絶えんものとは
- 歌の意味
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思いもしなかった。年が積もって老いたことは忘れられて、恋のために命が絶えようとするとは。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 866
詞書「上の男ども老後恋といへる心を仕うまつりけるに、詠ませ給うける」
殿上人たちが「老後恋」の題で歌を詠んだ折に、院がお詠みになった歌である。思っただろうか、年の積もったことは忘れて、恋に命が絶えようとは、と詠む。老いの身でありながら、年齢のことなど忘れて恋に命を懸けるほどの思いに陥ったことへの驚きを詠んでいる。老いて恋に身を焦がすという題の趣を、自身の驚きとして率直に表した一首である。
作者の「院御製」は後白河院である。鳥羽天皇の第四皇子で、第七十七代天皇となった。譲位後は長く院政を行い、藤原俊成に命じて本集を撰ばせた。今様を好み、『梁塵秘抄』を編んだことでも知られる。
本巻の第八百九十四首も初句を「思ひきや」で始め、思いもかけなかった恋の成り行きを詠んでいる。
初句「思ひきや」の「き」は過去の助動詞、「や」は反語の係助詞で、思っただろうか、いや思いもしなかった、の意である。ここで句切れとなり、二句以下と倒置の関係にある。本巻の第八百九十四首の初句と同じである。
二句「年の積もるは」は年齢が重なることは、すなわち老いたことは、の意である。題の「老後」に当たる。
三句「忘られて」の「られ」は自発の助動詞「らる」の連用形で、自然と忘れられて、の意である。
四句「恋に命の」は恋のために命が、の意である。二句の「年の積もる」と対比させ、老いの身の恋を表す。
結句「絶えんものとは」の「ん」は推量の助動詞で、命が絶えようとするとは、の意である。初句の「思ひきや」に返って結ぶ。
うへのをのこ:殿上人
- 作者
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後白河院
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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君にのみ下の思ひはかはしまの 水の心は浅からなくに
- 次の歌
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嘆きあまり憂き身ぞ今はなつかしき 君ゆゑ物を思ふと思へば