一夜とて夜離れし床のさむしろに
やがても塵の積もりぬるかな
- 歌の意味
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ほんの一夜だけのことと思って、あの人の訪れが途絶えた寝床の筵に、そのまますぐにも塵が積もってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 880
詞書「恋の歌とて詠める」
恋の歌として詠んだ歌である。たった一夜だけと思って訪れの途絶えた床の筵に、そのまますぐ塵が積もってしまった、と詠む。一夜くらいの途絶えはすぐに戻るだろうと思っていたのに、そのまま訪れが絶えて、寝床にはもう塵が積もるほどになったと、待つ女の寂しさとむなしさを表している。塵の積もる寝床という具体的な情景に、遠のいた男の心を映し出した歌である。
作者の「さぬき」は讃岐と呼ばれた女房である。誰を指すかについては定説を見ない。
初句「一夜とて」の「とて」は…と思って、の意で、ほんの一夜だけのことと思って、の意である。
二句「夜離れし床の」の「夜離る」は男が女のもとへ夜に通ってこなくなる意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。訪れの途絶えた寝床の、の意となる。
三句「さむしろに」の「さむしろ」は幅の狭い筵のことで、寝床に敷くものである。「さ」は接頭語である。
四句「やがても塵の」の「やがて」はそのまま、すぐに、の意である。初句の「一夜」と対比させ、短い途絶えのはずがそのまま続いたことを示す。
結句「積もりぬるかな」の「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形、「かな」は詠嘆の終助詞で、積もってしまったことだ、の意である。塵の積もることで、訪れの絶えた時の長さを暗示して結ぶ。
よがる:男が女のもとへ夜に通ってこなくなる
さむしろ:幅の狭い筵
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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待ちかねてさ夜もふけひの浦風に 頼めぬ浪の音のみぞする
- 次の歌
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長らへて変はる心を見るよりも 逢ふに命を替へてましかば