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長らへて変はる心を見るよりも
逢ふに命を替へてましかば

歌の意味
生き長らえて、あなたの変わってしまった心を見るよりは、逢うことと引き換えに、命を捨ててしまえばよかったものを。
鑑賞
巻第十四 恋歌四 881

詞書「百首歌詠ませ侍りける時、遇不遇恋といへる心を詠み侍りける」
 人々に百首歌を詠ませた時に、「遇うて遇はざる恋」の題で詠んだ歌である。生き長らえて変わる心を見るよりも、逢うことに命を替えてしまえばよかったのに、と詠む。一度は逢えたものの、その後相手の心が変わってしまったことを嘆き、こんなことなら逢えた時に命と引き換えにしてしまえばよかったと、激しい後悔を表している。相手の「変はる」と自分の命を「替ふ」とを響き合わせた一首である。
 作者の「摂政前右大臣」は九条兼実である。関白藤原忠通の子で、九条家の祖となった。右大臣を経て摂政、関白を務め、日記『玉葉』を残した。
 本巻の第八百七十四首は「ながらへゆけど忘れざりけり」と、生き長らえても逢瀬を忘れられないと詠み、本歌は生き長らえることをかえって厭うている。また第八百九十一首も、相手の心の「変はる」ことを詠んでいる。

 初句「長らへて」は生き長らえて、の意である。本巻の第八百七十四首の四句「ながらへゆけど」と通じる。
 二句「変はる心を」は相手の変わってしまった心を、の意である。本巻の第八百九十一首の四句「これも心の」以下と同じく、心の変わることを詠む。
 三句「見るよりも」の「より」は比較の格助詞で、見るよりは、の意である。
 四句「逢ふに命を」は逢うことに命を、すなわち逢うことと引き換えに命を、の意である。
 結句「替へてましかば」の「替ふ」は引き換える意で、二句の「変はる」と響き合う。「て」は完了の助動詞「つ」の連用形、「ましかば」は反実仮想の仮定で、引き換えてしまったならば、の意である。後に続く、よかったのに、の意を言いさして、後悔の余韻を残している。

かふ:引き換える
作者
九条兼実
出典
千載和歌集
前の歌
一夜とて夜離れし床のさむしろに やがても塵の積もりぬるかな
次の歌
逢ふことのありし所し変はらずは 心をだにもやらましものを