はかなしな憂き身ながらも過ぎぬべき
この世をさへも忍びかぬらん
- 歌の意味
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はかないことだ。つらい身ながらもやがて過ぎてしまうはずのこの世でさえ、どうして耐え忍ぶことができないのだろう。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌上 1029
詞書「述懐の心を詠める」
前歌と同じく述懐の心を詠んだ歌である。はかないことだ、つらい身ながらも過ぎていくはずのこの世さえ、どうして耐え忍べないのだろう、と詠む。どうせ短く過ぎ去ってしまう世なのだから耐えればよいはずなのに、それさえできない自分の弱さを嘆き、はかなさの自覚と割り切れない心を詠んでいる。
作者の「経因法師」は平安時代後期の僧で、伝記の詳細は明らかでない。
本巻の第千二十四首から続いた述懐の歌の最後の一首である。前歌の第千二十八首とともに、憂き身の嘆きを詠む歌が並ぶ。
初句「はかなしな」の「な」は詠嘆の終助詞で、はかないことだ、の意である。ここで句切れとなる。
二句「憂き身ながらも」は、つらい身でありながらも、の意である。前歌の第千二十八首の四句「憂きより外の」と応じる。
三句「過ぎぬべき」の「ぬ」は完了の助動詞、「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形で、過ぎてしまうはずの、の意である。
四句「この世をさへも」の「さへ」は添加の副助詞で、このはかない世でさえも、の意である。
結句「忍びかぬらん」の「かぬ」は、〜しかねる意、「らん」は原因推量の助動詞で、どうして耐え忍べないのだろう、の意である。
しのぶ:こらえる、耐え忍ぶ
うきみ:つらいことの多い身
- 作者
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経因
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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過ぎ来にし四十路の春の夢の世は 憂きより外の思ひ出でぞなき
- 次の歌
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ゆくすゑを思へば悲し津の国の 長柄の橋も名は残りけり