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思ひやれとよにあまれる灯火の
かかげかねたる心細さを

歌の意味
思いやってほしい。十年余りもともし続けてきた灯火の芯をかき立てかねるように、望みを掲げることもできずに細ってゆく心細さを。
鑑賞
巻第十七 雑歌中 1084

詞書「学問料申し侍りけるを賜はらず侍りける時、人の訪らひて侍りける返り事に、詠みて遣はしける」
 学問料を願い出たのに与えられなかった時、人が見舞ってくれた返事として詠んで送った歌である。思いやってほしい、十年余りにわたる灯火の芯をかき立てかねるような心細さを、と詠む。長年灯火のもとで学問に励んできたのに、学資を得られず前途の望みも絶たれかけている。その心細さを、芯をかき立てられずに細ってゆく灯火にたとえて、見舞ってくれた人に訴えている。
 作者の「大江匡範」は文章道を家業とする大江氏の出身で、平安時代後期の官人である。伝記の詳細は明らかでない。
 本巻の第千百四十八首と初句「思ひやれ」を共有し、ともに我が身の心細い境遇を相手に思いやるよう求めている。

 初句「思ひやれ」は命令形で、思いやってほしい、の意である。ここで句切れとなり、結句の「心細さを」と倒置の関係にある。本巻の第千百四十八首と同じ初句である。
 二句「とよにあまれる」は、十年余りにわたる、の意と解され、灯火のもとで学び続けた長い年月を言う。
 三句「灯火の」の「の」は比喩を表し、灯火のように、の意で四句へ続く。
 四句「かかげかねたる」の「かかぐ」は灯心をかき立てて明るくする意で、望みを掲げかねる意を重ねている。
 結句「心細さを」は、灯火の細る縁で「心細さ」と結び、初句の「思ひやれ」の対象を示している。

がくもんれう:大学寮で学ぶ者に与えられる学資
かかぐ:灯心をかき立てて明るくする
とよ:十年余りの意と解される
作者
大江匡範
出典
千載和歌集
前の歌
数ならぬ身をうき雲の晴れぬかな さすがに家の風は吹けども
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世の憂さを思ひしのぶと人も見よ かくてふるやの軒の気色を