- 歌の意味
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世を背いて草の庵に住み始め、墨で染めたこの衣の色は、もとに返るものだろうか。いや、私が山を出て帰ることなどない。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌中 1147
詞書「山寺に籠もりゐ侍りけるに、坊にとどまりたる人の、いつか出でんずると問ひて侍りければ、言ひ遣はしける」
山寺に籠もっていた時、僧坊に残っていた人が、いつ山を出るつもりかと尋ねてきたので、言い送った歌である。世を背いて草の庵に住み初め、墨染の衣の色はもとに返るものだろうか、と詠む。一度墨で黒く染めた衣が、もとの色に戻ることがないように、世を捨てて山の庵に住み始めた自分が、再び俗世に帰ることはないと、問いかけた人に出家の決意の固さを答えている。
作者の「覚俊上人」は平安時代後期の僧で、伝記の詳細は明らかでない。
本巻の第千百三十六首、第千百三十七首、次歌の第千百四十八首と「墨染」を共有する。また本巻の第千百三十三首が友の便りに応えて山を出ようかと詠むのに対し、本歌は山を出ることはないと答えており、対照をなしている。
初句「世を背き」は、世を捨てて出家し、の意である。
二句「草の庵に」は、草で葺いた粗末な住まいに、の意である。
三句「すみ染の」の「すみ」は、「住み」と「墨」を掛ける掛詞で、草の庵に住み始めた意と、墨で染めた衣の意を重ねている。次歌の第千百四十八首の三句「すみ染の」と同じ言葉である。
四句「衣の色は」は、墨染の衣の色は、の意である。
結句「かへるものかは」の「かへる」は、色がもとに「返る」意と、山から俗世に「帰る」意を掛ける掛詞で、「かは」は反語の係助詞である。返るだろうか、いや返りはしない、の意となる。
すみぞめ:「墨染」と「住み初め」を掛ける
かへる:色が「返る」の意と、俗世に「帰る」の意を掛ける
ばう:僧の住む建物、僧坊
- 作者
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覚俊
- 出典
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千載和歌集
- 前の歌
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世の中の憂きは今こそ嬉しけれ 思ひ知らずは厭はましやは
- 次の歌
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思ひやれならはぬ山にすみ染の 袖に露置く秋の気色を