霜だにもおかぬかたぞといふなれど
浪の中にはゆきぞ降りける
- 歌の意味
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ここは霜さえも降りない地方だと人は言うけれども、波の中には雪が降っていることだ。
- 鑑賞
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一月十六日、風と波がやまないので、一行はなお同じ所にとどまっていた。人々は、ただ海に波がなくなって、早く「みさき」という所を渡りたいとばかり思っていた。しかし風も波も、やむ気配はなかった。
「みさき」は室戸岬のことで、土佐から阿波へ向かう航路の難所であった。
波が立つのを見て、ある人が詠んだのがこの歌である。
この歌に対する反応は記されていない。日記には続けて、船に乗った日から今日までで二十五日になったと記され、足止めの長さが強調されている。
初句「霜だにも」の「だに」は、さえの意を表す副助詞で、霜さえも、の意。第二句「おかぬかたぞと」は、降りない地方であると、で、南国の土佐の暖かさをいう。第三句「いふなれど」の「なれ」は伝聞の助動詞「なり」の已然形で、人はそう言うようだけれども、という。
第四句「浪の中には」、結句「ゆきぞ降りける」で、波の中には雪が降っていることだ、と結ぶ。「ぞ」は強意の係助詞で、連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。
白く砕ける波しぶきを雪に見立てた歌で、霜も降りない暖かい土地なのに、波の中にだけは雪が降る、という対比に興趣がある。一月十八日にも、白波を雪や花に見立てる歌が続けて詠まれている。
かた:方角。地方
- 作者
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紀貫之
- 出典
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土佐日記
- 前の歌
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立てばたつゐれば又ゐる吹く風と 浪とは思ふどちにやあるらむ
- 次の歌
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みなそこの月のうへより漕ぐふねの 棹にさはるは桂なるらし