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日をだにもあま雲ちかく見るものを
都へと思ふ道のはるけさ

歌の意味
遠い太陽でさえ空の雲の近くに見えるのに、都へと思う道のなんと遥かなことか。
鑑賞
 一月二十七日、風が吹き波が荒いので、船は出さなかった。人々は皆たいそう嘆いた。男たちは心を慰めるために漢詩を口ずさみ、「日を望めば都遠し」などという句を語っていた。
 「日を望めば都遠し」は、中国の晋の明帝が幼いころ、太陽と都の長安とどちらが遠いかと問われて、目を上げれば太陽は見えるが長安は見えない、と答えたという故事に基づく句である。
 男たちが口にする漢詩の句の内容を聞いて、ある女が詠んだのがこの歌である。
 続けて、ある人が「吹くかぜの絶えぬ限りし立ちくれば波路はいとゞはるけかりけり」と詠んだ。

 初句「日をだにも」の「だに」は、さえの意を表す副助詞で、太陽でさえも、の意。第二句「あま雲ちかく」は、空の雲のあたりに近く、第三句「見るものを」は、見ることができるのに、と逆接で続く。
 第四句「都へと思ふ」、結句「道のはるけさ」は、都へ帰ろうと思う道のりの遥かなことよ、と体言止めで結んでいる。
 男たちの漢詩の句「日を望めば都遠し」を和歌に詠みかえ、遠い太陽でさえ雲のあたりに見えるのに、都はなお見えない、と帰京の道の遠さを嘆いている。漢詩の発想を女性の立場から和歌に移した点に工夫がある。

はるけさ:遥かであること。遠さ
作者
紀貫之
出典
土佐日記
前の歌
追風の吹きぬる時はゆくふねの 帆手てうちてこそうれしかりけれ
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吹くかぜの絶えぬ限りし立ちくれば 波路はいとゞはるけかりけり