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おきなから明せる霜の朝こそ
まされる物はよになかりけれ

歌の意味
起きたまま夜を明かして迎えた霜の朝ほど、つらさのまさるものは、この世になかったことだ。
鑑賞
 夕暮れの物悲しさをめぐる贈答の翌日、まだ早朝のうちに、霜がたいそう白く置いていた。帥の宮から「さて、今朝の今頃はいかが」と文が届いた。
 女は和泉式部のことで、大江雅致の娘であり、和泉守橘道貞の妻として小式部内侍をもうけた。帥の宮は冷泉天皇の第四皇子敦道親王で、大宰帥であったことからこう呼ばれる。
 霜の白い朝、帥の宮から様子を尋ねる文が届き、和泉式部はこの歌で答えた。
 二人はこのように歌を交わした。その後、帥の宮は、いつものようにしみじみとしたことを書き連ねて、「われひとりおもふは思かひもなしおなし心に君もあらなん」を送ってきた。

 初句と第二句の「おきなから明せる霜の」は、起きたままで夜を明かした霜の、という意味で、「おき」には寝ずに「起き」ている意と、霜が「置き」の意が掛けられている。「る」は完了の助動詞「り」の連体形である。第三句の「朝こそ」は、朝ほど、の意である。
 下の句の「まされる物はよになかりけれ」は、まさるものはこの世になかった、という意味で、「こそ〜けれ」は係り結び、「けれ」は詠嘆の助動詞「けり」の已然形である。帥の宮を思って眠れぬまま夜を明かし、白い霜を見る朝のつらさは、この世で何よりもまさると、「今朝の今頃は」という問いに率直に答えている。

置く(おく):露や霜が降りる
作者
和泉式部
出典
和泉式部日記
前の歌
夕暮は誰もさのみそおもほゆる まちわふ君そ人にまされる
次の歌
われひとりおもふは思かひもなし おなし心に君もあらなん