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われひとりおもふは思かひもなし
おなし心に君もあらなん

歌の意味
私一人だけが思っているのでは、思う甲斐もない。あなたも私と同じ心であってほしい。
鑑賞
 夕暮れの物悲しさをめぐる贈答の翌日、まだ早朝のうちに、霜がたいそう白く置いていた。帥の宮から「さて、今朝の今頃はいかが」と文が届いた。
 女は和泉式部のことで、大江雅致の娘であり、和泉守橘道貞の妻として小式部内侍をもうけた。帥の宮は冷泉天皇の第四皇子敦道親王で、大宰帥であったことからこう呼ばれる。
 霜の朝に「おきなから明せる霜の朝こそまされる物はよになかりけれ」などと歌を交わしたのち、帥の宮は、いつものようにしみじみとしたことを書き連ねて、この歌を送った。
 和泉式部は「君は君我は我ともへたてれはこゝろこゝろにあらん物かは」と返した。

 初句と第二句の「われひとりおもふは思」は、私一人が思うのは、思う、という意味で、「思ふ」を重ねることで思いの一方通行のむなしさを強調している。第三句の「かひもなし」は、甲斐もない、の意である。
 下の句の「おなし心に君もあらなん」は、あなたも同じ心であってほしい、という意味で、「なむ」は他に対する願望の終助詞である。邸へ参る決心をなかなかつけない和泉式部に向けて、自分だけが思っていても仕方がない、あなたも同じ思いでいてほしいと率直に訴えている。

甲斐(かい):効き目、するだけの価値
作者
敦道親王
出典
和泉式部日記
前の歌
おきなから明せる霜の朝こそ まされる物はよになかりけれ
次の歌
君は君我は我ともへたてれは こゝろこゝろにあらん物かは