門ごとに立つる小松に飾られて
宿てふ宿に春は来にけり
- 歌の意味
-
家々の門ごとに立てる小松に飾られて、宿という宿にはどこにも春がやって来たことだ。
- 鑑賞
-
春歌 5
詞書「家々翫春と云ふ事」
詞書の「家々翫春」は、家々で春を楽しむという題である。正月に家々の門に小松を立てて飾る習わしを詠み、どの家にも等しく春が訪れた様子を祝っている。
門に立てられた小松に飾られる形で春が家々にやって来る、ととらえたところに趣がある。「宿てふ宿」と同じ語を重ねることで、町じゅうの家々に春が行き渡っている様子をにぎやかに表している。
初句「門ごとに」は、家々の門のひとつひとつに、の意である。
二句「立つる小松に」は、正月に門に立てて飾る小松をいう。現在の門松にあたる風習である。
三句「飾られて」は、春が小松に飾られて来る、ととらえる表現である。
四句「宿てふ宿に」の「てふ」は「といふ」が縮まった形で、宿という宿すべてに、の意を表す。同じ語を重ねて、どの家にも漏れなくという広がりを出している。
結句「春は来にけり」の「けり」は詠嘆で、どの家にも春が来たことに気づいた感動を表して結んでいる。
やど:家、住まい
こまつ:小さな松。ここでは正月に門に立てて飾る松
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
立ちかはる春を知れとも見せ顔に 年をへだつる霞なりけり
- 次の歌
-
子の日して立てたる松に植ゑ添へん 千代重ぬべき年のしるしに