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若菜摘む今日に初子のあひぬれば
まつにや人の心ひくらん

歌の意味
若菜を摘む今日の日に初子の日が重なったので、あなたの心は若菜よりも小松に引かれ、また人を待つ思いに引かれているのだろうか。
鑑賞
春歌 17

詞書「若菜に初子のあひたりければ、人のもとへ申し遣はしける」
 詞書によれば、若菜を摘む日と正月の初子の日とが重なった折に、ある人のもとへ詠み送った歌である。初子の日は小松を引く日であるから、今日のあなたの心は若菜よりも松のほうに引かれているだろう、と言い、その「松」に「待つ」を掛けて、誰かを待つ心に引かれているのではと問いかけている。
 行事の重なりを機知に富んだ言葉遊びに仕立て、相手の心を軽くからかうような贈答の歌である。子の日の歌から若菜の歌へと移る配列のつなぎ目に置かれている。

 初句「若菜摘む」は、春の初めに野に出て若菜を摘む行事をいう。
 二句「今日に初子の」は、今日という日に初子の日が、の意である。初子は正月最初の子の日である。
 三句「あひぬれば」は、重なったので、の意で、二つの行事が同じ日に当たったことをいう。
 四句「まつにや人の」の「まつ」は、子の日に引く「松」と、人を「待つ」とを掛けた掛詞である。「や」は疑問の係助詞で、結句の「らん」と係り結びをなす。
 結句「心ひくらん」の「ひく」は、小松を「引く」ことと心が「引かれる」こととを重ねている。推量の「らん」で、相手の心を推し量って結んでいる。

わかな:春の初めに摘む食用の若草
はつね:正月最初の子の日
まつ:子の日に引く松と、人を待つ意を掛ける
ひく:小松を引く意と、心が引かれる意を掛ける
作者
西行
出典
山家集
前の歌
子の日しに霞たなびく野辺に出でて 初鶯の声を聞きつる
次の歌
今日はただ思ひも寄らで帰りなん 雪つむ野辺の若菜なりけり