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今日はただ思ひも寄らで帰りなん
雪つむ野辺の若菜なりけり

歌の意味
今日はただ若菜摘みなど思いも寄らずに帰ろう。雪の積もった野辺の若菜であったのだから。
鑑賞
春歌 18

詞書「雪中若菜」
 雪の中の若菜を題とする歌である。若菜を摘もうと野に出たものの、野辺は雪に覆われていて、摘むどころではない。今日はあきらめて帰ろう、と詠んでいる。
 「つむ」に雪が「積む」と若菜を「摘む」とを掛け、若菜を摘む野が雪の積もる野になってしまった、という機知を一首の要としている。早春の若菜摘みが、まだ冬の名残に阻まれる季節の様子が描かれている。

 初句「今日はただ」は、今日のところはただ、の意で、摘むことをあきらめる気持ちを表す。
 二句「思ひも寄らで」は、若菜を摘むことなど思いも寄らないで、の意である。
 三句「帰りなん」の「なん」は強い意志を表し、帰ってしまおうと言い切って三句切れとなる。
 四句「雪つむ野辺の」の「つむ」は、雪が「積む」と若菜を「摘む」とを掛けた掛詞である。
 結句「若菜なりけり」は、雪に埋もれた野辺の若菜であったのだ、と気づきの「けり」で理由を示して結ぶ。上の句と下の句が倒置となっている。

つむ:雪が積もる意と、若菜を摘む意を掛ける
わかな:春の初めに摘む食用の若草
作者
西行
出典
山家集
前の歌
若菜摘む今日に初子のあひぬれば まつにや人の心ひくらん
次の歌
春日野は年のうちには雪積みて 春は若菜の生ふるなりけり