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春のほどは我が住む庵の友になりて
古巣な出でそ谷の鶯

歌の意味
春の間だけでも、私の住む庵の友となって、古巣を出て行かないでおくれ、谷の鶯よ。
鑑賞
春歌 30

詞書は前の歌に続き「住みける谷に、鶯の声せずなりければ」
 一連の四首目で、締めくくりの歌である。せめて春の間は、私の住む庵の友となって古巣を離れないでほしい、と谷の鶯に呼びかけている。
 一連の歌は、鶯が去った嘆き、忘れないでほしいという願い、巣守を頼まれたという想像と進み、最後にここで、とどまってほしいという率直な願いに至っている。庵での孤独な暮らしの中で、鶯を唯一の友として慕う心が表れている。

 初句「春のほどは」は、春の間は、の意で、字余りとなっている。
 二句「我が住む庵の」は、私が住んでいる粗末な住まいの、の意である。
 三句「友になりて」は、友となって、の意で、字余りである。
 四句「古巣な出でそ」は、「な~そ」の形で、古巣を出て行くな、と穏やかに禁止する表現である。
 結句「谷の鶯」は体言止めの呼びかけで、鶯に直接語りかけて一連を結んでいる。

いほ:草や木で作った粗末な住まい
ふるす:以前に住んでいた巣
作者
西行
出典
山家集
前の歌
鶯は我を巣守に頼みてや 谷の岡辺は出でて鳴くらむ
次の歌
萌え出づる若菜あさると聞こゆなり 雉鳴く野の春の曙