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春の霞家立ち出でて行きにけん
雉立つ野を焼きてけるかな

歌の意味
春の霞が立つように、雉は住みかを立ち出て行ってしまったのだろう。雉の飛び立つ野を焼いてしまったことだなあ。
鑑賞
春歌 33

詞書は前の歌に続き「雉を」
 雉の歌の三首目である。春先に枯れ草を焼く野焼きによって、雉の住む野が焼かれてしまったことを詠む。春の霞が立ちのぼるように、雉も住みかを立ち出て行ってしまったのだろう、と雉の身の上を思いやっている。
 「霞」「立ち出で」「立つ」と「立つ」を重ね、霞が立つことと雉が飛び立つこととを結びつけている。前歌の枯野の雉から、その枯野が焼かれる場面へと展開している。

 初句「春の霞」は字余りで、春に立ちこめる霞をいう。霞が「立つ」ことから、二句の「立ち出でて」を導いている。
 二句「家立ち出でて」は、住みかを立ち出て、の意で、雉が巣を離れることをいう。
 三句「行きにけん」の「けん」は過去の推量で、行ってしまったのだろう、と推し量って三句切れとなる。
 四句「雉立つ野を」は、雉の飛び立つ野を、の意である。「立つ」は二句と重ねて用いられている。
 結句「焼きてけるかな」は、焼いてしまったことだなあ、の意で、野焼きによって雉の住む野が失われたことを詠嘆の「かな」で結んでいる。

のやき:春先に野の枯れ草を焼き、新しい草の芽生えを促すこと
たちいづ:その場所から出て行く
作者
西行
出典
山家集
前の歌
生ひかはる春の若草待ちわびて 原の枯野に雉鳴くなり
次の歌
片岡に柴移りして鳴く雉 立つ羽音とて高からぬかは