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心せん賤が垣根の梅はあやな
よしなく過ぐる人とどめけり

歌の意味
気をつけなければならない。身分の低い者の家の垣根の梅は、わけもなく、ただ通り過ぎるだけの人まで引き止めてしまったことだ。
鑑賞
春歌 36

詞書は前の歌に続き「山家梅」
 山家の梅の二首目である。粗末な家の垣根に咲く梅は、その香りで、用もなくただ通り過ぎるはずの人まで引き止めてしまう。だから用心しなければならない、と詠んでいる。
 前歌が梅の香に誘われて訪れる人を待ったのに対し、この歌では静かな暮らしを乱すほどに人を引き止める梅に、用心しようと言っている。人を待つ心と人を避ける心という、山里に住む者の二つの思いが並べられている。

 初句「心せん」は、気をつけよう、用心しよう、の意で、初句切れとなる。
 二句「賤が垣根の」は、身分の低い者の家の垣根の、の意で、山里の粗末な住まいを指している。
 三句「梅はあやな」の「あやな」は、わけがわからない、筋が通らない、の意で、字余りとなっている。
 四句「よしなく過ぐる」は、用もなく、理由もなく通り過ぎる、の意である。
 結句「人とどめけり」は、通りすがりの人まで引き止めてしまった、の意で、気づきの「けり」で結んでいる。

しづ:身分の低い者
こころす:気をつける、用心する
作者
西行
出典
山家集
前の歌
香をとめん人にこそ待て山里の 垣根の梅の散らぬ限りは
次の歌
この春は賤が垣根に触ればひて 梅が香とめん人親しまん